高齢者や低所得者など、住まいの確保がむずかしい人々の支援として、2017年10月に改正された「新たな住宅セーフティネット法」。
今回は、新たな住宅セーフティネット制度とは何か、概要やメリット&デメリットなどについて、わかりやすく図解していきます。
住宅セーフティネット法とは?
住宅セーフティネット法とは、低所得者や高齢者など、住まいの確保がむずかしい人々を支援するために制定された法律です。
正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といいます。
住宅確保要配慮者(じゅうたくかくほようはいりょしゃ)は、「低所得者、被災者、高齢者、障がい者、子育て世帯」と定められています。低所得者の基準は、月収が15万8000円以下の世帯です。
住宅セーフティネット法の背景
住宅セーフティネット法改正の背景には、「空き家の増加」と「住宅確保要配慮者」の増加、これら2つの問題があります。
空き家の増加
現在の日本では、空き家が増加傾向にあり、2033年には「約3戸に1戸」が空き家になるといわれています。
住宅確保要配慮者の増加
「低所得者、被災者、高齢者、障害者、シングルマザー(ファザー)」など、住宅確保要配慮者と呼ばれる人々は、年々増加しています。
国土交通省によると、2035年には「65歳以上の単身者」が700万人を超える推計があります。
参考:新たな住宅セーフティネット制度平成29年度版 – 国土交通省
これらの人々は、孤独死や家賃滞納のリスクもあるため、大家から入居を拒否されてしまうケースも多いです。
こうした問題を解決するため、政府は空き家を活用して、住まいの確保を支援する取り組みをはじめました。
住宅セーフティネット法の概要
住宅セーフティネット法は、次の3つの柱から成り立っています。
住宅の登録制度
“入居を拒まない住宅” として、物件を登録できます。登録は不動産のオーナーが行い、都道府県か都道府県が定める登録機関に届け出ます。
登録には、以下の条件を満たす必要があります。
住宅の登録基準
- 耐震性があること
- 住戸の床面積が25㎡以上あること
※シェアハウスの場合は、「専用居室が9㎡以上」「住宅全体の面積が15㎡×居住人数+10㎡以上」「台所、リビング、トイレ、浴室、洗面所が設けられている」ことが求められます。
登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
入居を拒まない住宅として登録した物件の改修や、入居者の負担を減らすための支援が用意されています。
例えば、不動産オーナーへの支援として、改修費などに対する補助金制度。そして、入居者への経済的な支援として、家賃や保証料などに対する補助などがあります。
居住の支援
これまで福祉関係者が行なってきた「住宅確保要配慮者の居住支援」は、都道府県が指定した居住支援法人が、入居者の相談・見守りといったサポートをおこないます。
住宅セーフティネット住宅のメリット&デメリット
住宅セーフティネット住宅には、次のようなメリット&デメリットがあります。
メリット
- おひとりさまの高齢者や低所得者でも、入居を拒まれない
- 耐震性や住居の広さなど、国土交通省が定める基準を満たした住居に住める
- 入居の相談や見守りサービスといった、サポートを受けられる
- 連帯保証人がいない場合でも、国に登録している適正な業者から家賃債務保証サービスを受けられる
- 家賃や保証料の減免・補助が受けられる場合がある
デメリット
- 対象物件がまだ少ない
- 空き家を利用する場合「部屋がせまい」「築年数が古い」「駅から遠い」など、条件があわないケースがある
- キッチンやバス・トイレなどが共用の場合がある
- 入居者は何かしらの事情をかかえており、トラブルになる可能性がある
空き家を活かす、住宅セーフティネット法
空き物件を活用し、高齢者や低所得者の住まいを確保するために目を向けたのが、新しい住宅セーフティネット制度です。
この制度によって、それぞれが条件にあった住まいで暮らせることが期待されています。