近年は、「身寄りがなく入るお墓がない」と、お墓や埋葬について不安をもつ、老後のおひとりさまが増えています。
そこで今回は、ひとり暮らしのお墓をどうすべきか「おひとりさまのお墓の終活」について、やさしく解説します。
おひとりさまのお墓の問題
おひとりさまが抱えるお墓の問題は、大きく2つあります。
- 先祖代々のお墓をどうするか?
- 自分のお墓をどうするか?
先祖代々のお墓をどうするか?
1つ目の問題は「先祖代々のお墓をどうするか?」ということです。
遠方に住んでいたり、身体が悪くお墓参りにいくのが難しい…など、近年では、供養されずに放置された「無縁墓(むえんばか)」が増えています。
先祖代々のお墓をどうするかといった課題は、おひとりさまが抱える大きな問題にもなっています。
自分のお墓をどうするか?
2つ目の問題は「自分のお墓をどうするか?」ということです。
近年は、独身や子どもがいないなど、老後のひとり暮らしが増えています。身近に頼れる身寄りがいないのは、おひとりさまにとって大きな障害といえます。
自分の死後、誰が供養してくれるのか、そして遺骨はどこに納まるのか、といった課題について、しっかり考えなければいけません。
おひとりさまのお墓の終活
それでは、おひとりさまが抱える “お墓の問題” を解決する方法について見ていきましょう。
先祖代々のお墓を「墓じまい」する
墓じまいとは、今あるお墓を撤去し、遺骨を他の墓地に移す、あるいは永代供養や自然葬をして供養することをいいます。
「身体が悪い、遠方に住んでいるなどの理由で、お参りに行けない」「配偶者や子どもがいないので、自分の代で墓を閉じるしかない」などのニーズも高く、墓じまいは新たな弔いの形として注目を集めています。
すべてを失なくしてしまうのは少しさみしい、という方は、遺灰をペンダントにして手元に残しておく「手元供養」という方法もあります。
自分のお墓選び
おひとりさまのお墓選びには、次の3つがおすすめです。
①個人墓
個人墓とは、一人だけで入るお墓のことです。永代供養の一種であり、一定の契約期間が終わると合祀墓(ごうしぼ)移されます。
②永代供養墓
永代供養墓とは、お寺や霊園が遺骨を預かり、永代にわたって供養してくれる埋葬方法のことです。
③自然葬(散骨・樹木葬)
遺灰を自然にかえす散骨や樹木葬など「自然葬」も、近年注目を浴びています。
これら3つの埋葬方法は、お墓を継承する人がいない、おひとりさまでも安心です。
おひとりさまは「生前契約」を結ぼう!
生前契約とは、自分のお葬式やお墓について、生前のうちに決めて契約しておくことです。
「身寄りがいないため、万が一のとき、自分の葬儀をお願いする人がいない…。」といった、おひとりさまも安心して、備えることができます。
生前契約をするうえで大切なこと
生前契約をする上では、「葬儀の内容」を詳細に決め、「費用の支払い方法」を明確に定める、ことが大切です。
また、自分が亡くなったときには「すでに葬儀社が倒産していた」「ご家族がいないことをいいことに、契約通りに葬儀を行わない」といったことが、ないとは言い切れません。
そのため、生前契約を結ぶうえでは、次のことをしっかり確認しておきましょう。
①更新や解除の条件
どんな葬儀にしたいかは、変わることがあります。そのため、後から内容の見直しや更新ができるか、また解約の自由があるかを確認しておきましょう。
②執行人は誰か
契約にあたっては、葬儀の執行人を決めて、その人に同意してもらう必要があります。契約をしっかり遂行してくれる、信頼できる人を「執行人」に指定しましょう。
生前契約は「葬儀信託」が安心!
葬儀信託(そうぎしんたく)とは、お葬式の費用を銀行や信託会社に預け、葬儀が正しく行われたときに葬儀社に支払われるというシステムです。
葬儀信託の形をとっていれば、契約通りに葬儀が行われたのを指図人(弁護士など)が確認したうえで、葬儀社にお金が支払われます。
また、万が一葬儀社が倒産しても、お金が返還されるので安心です。
生前契約は不明確な要素を含むため、葬儀社や信託会社の信頼性・安定性をよく見極めることが大切になります。
おひとりさまは「死後事務委任」を利用しよう!
死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)とは、自分が亡くなったときに死後の手続きをしてくれるよう、生前のうちに依頼しておくものです。
人が亡くなると、さまざまな事務が発生します。
- 死亡届や役所への各種手続き
- お通夜やお葬式の手配
- ガスや電気の停止
- クレジットカードの解約
- SNSやウェブサービスの解約・削除申請
- 介護施設や病院代の清算
- 年金や健康保険の資格抹消手続き
- 遺品整理(自宅の片付け) など…。
こうした、死後の事務は親族が行うものですが、身寄りのない方には死後の手続きをしてくれる人がいません。
死後事務委任契約では、自分が亡くなったとき「誰に連絡するのか」「お葬式やお墓はどうするのか」「遺灰はどう埋葬・供養するのか」といった内容について取り決めます。
遺言書で実現できない希望を叶えるのが「死後事務委任」
自分の意思を託すものに「遺言書」がありますが、遺言書は「遺産を誰に譲るか」など、財産継承に関することしか記載できず、お葬式やお墓の希望を書いても、法的に効力を持たせることができません。
こうした遺言書では実現できない希望を叶えるものが「死後事務委任契約」です。
死後事務委任契約を結んでおくことで、身寄りのないおひとりさまのお墓の不安を解消し、安心して最期を迎えることができます。
受任者になれる人
死後事務委任契約では、死後の手続きを依頼する「受任者」を決めます。
受任者になれる人に制限はありませんが、トラブルなく契約を遂行するためにも、「弁護士」「司法書士」「行政書士」などの専門家に依頼するのがよいでしょう。
おひとりさまのお墓まとめ
おひとりさまのお墓は、永代供養や自然葬を選べば、継承者がいなくても安心です。
また、頼れる身寄りがいない方は、死後の手続きをスムーズに遂行するためにも「生前契約」や「死後事務委任契約」を利用してみるとよいでしょう。