任意後見制度を利用したいけど、「何をどうすればいいのか分からない…。」
そんな方のために、本記事では「任意後見制度の手続きと流れ、申立てに必要な書類や費用」について、手順別にわかりやすく解説します。
任意後見制度の手続きと流れ
任意後見制度を利用するための、手続きの流れをご紹介します。
①任意後見受任者を決める
まずは、任意後見受任者を決めます。(任意後見受任者とは、将来、自分が認知症になったときに後見人として支援してくれる人のことです。)
★任意後見受任者になれる人
任意後見受任者は「20歳以上」であれば誰でもなれます。家族や親戚、友人をはじめ、弁護士や司法書士、法人でもOKです。
ただし、以下の人は任意後見人にはなれません。
- 未成年者
- 破産者
- 行方不明者
- 家庭裁判所から法定代理人などを解任されたことがある人
- 本人に対して裁判をしたことがある人、その配偶者と直系血族
- 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある人
②任意後見契約の締結
任意後見受任者を決めたら、公証役場(こうしょうやくば)で「任意後見契約」を結びます。
▼任意後見契約で決めること。
自分が認知症になったときに、
●どんな施設に入所したいか
●どんな生活をしたいか
…など。
任意後見契約は「公正証書(こうせいしょうしょ)」の形式で契約し、公証役場から東京法務局に登記手続きがとられ、守る人が任意後見受任者として登記されます。
全国の公証役場は、日本公証人連合会の「公証役場一覧」で検索できます。
③申立て
本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所に「任意後見監督人選任」の申立てをします。申立てができるのは「本人、配偶者、4親等以内の親族、後見人の予定者」です。
申立て後は、家庭裁判所による審理が行われ、“本人の判断能力が不十分である” と認められたら任意後見監督人が選任されます。
(任意後見監督人とは、自分が選任した後見人がしっかり仕事をしているかを監督する人のことです。)
★任意後見監督人になれる人
任意後見監督人は誰でもなることができますが、実際には「弁護士や司法書士」が選任されるケースが多いです。
④後見開始
任意後見監督人が選任されたら、任意後見受任者は「任意後見人」となり、任意後見契約にもとづいて業務を開始します。
後見の終了
本人または任意後見人が、死亡・破産すると任意後見が終了します。
その他、任意後見人が認知症になったとき、解任されたとき、辞任したときも契約が終了となります。
任意後見契約を解除する方法
任意後見契約は、発効前(任意後見監督人の選任前)であれば、いつでも解除できます。
一方で、発効後(任意後見監督人が選任され後見が開始された後)は、任意後見契約を自由に解除することができません。
発効後の解除には、正当な事由と、家庭裁判所による許可が必要です。
▼【正当な事由】とは?
- 任意後見人が病気などで、後見人としての仕事ができない場合
- 不正な行為
違法行為や社会的に問題ある行為など - 著しい不行跡
本人の財産を使い込む恐れがある場合など - その他任務に適しない事由
解除の申立てができるのは、本人または任意後見人です。
任意後見の3類型
任意後見の利用には、3つのパターン(3類型)があります。
将来型
元気なうちに「任意後見契約」を締結し、将来、本人の判断能力が低下したときに「任意後見監督人の選任の申立て」を行い、任意後見を開始するものです。
移行型
元気なうちは「任意代理の委任契約」を締結して業務を依頼し、本人の判断能力が低下したら任意後見を開始するものです。
まだ判断能力は衰えてないけど、一人暮らしで生活に不安があったり、身体の状態や病気などの理由から、一定の財産管理を任せたいという場合に利用されます。
本人からすると、判断能力が低下する前に、まかせる人の雰囲気や人柄を前もって知っておけるので安心といえます。
即効型
任意後見契約と同時に、後見を開始するものです。
すでに本人の判断能力がかなり低下しており、すぐにでも後見人をつけることが望ましいが、契約を締結するだけの判断能力が本人に残っている場合に利用されます。
任意後見の必要書類
任意後見契約に必要な書類は、以下のとおりです。
必要書類 | 取得先 |
---|---|
◎本人 印鑑証明書 / 戸籍謄本 / 住民票 |
本籍地のある市区町村役場 |
◎任意後見受任者 印鑑証明書 / 住民票 |
市区町村役場 |
※不動産ごとに任意後見人を定める場合は、不動産の登記簿謄本も用意します。(法務局で取得)
任意後見にかかる費用
任意後見契約(公正証書の作成)にかかる費用は、以下のとおりです。
手数料 | 11,000円 |
---|---|
登記嘱託手数料 | 1,400円 |
収入印紙代 | 2,600円 |
その他 | 郵送用の切手代など |
※入院中など、病院で公正証書を作成する場合は、公証人が病院まで行くための、公証人の日当、旅費などがかかります。